2014年1月30日木曜日

2013年 日本のヒップホップベストディスク Pt.2


続きです。前回はこちら
#10 WATT a.k.a. ヨッテルブッテル『Shikou品』



 まずは諭吉レコーズからのデビューとなったトラックメーカー/ラッパーのアルバムを。
シンセでギャンギャンしたトラックが主流の今、温もり豊かなサンプリング中心に編まれた13曲は彼自身の人柄が表れているラップで聞いていて非常に気持ちいい作品です。
ラップはNORIKIYOのフロウにボンクラ感と優しさをいい塩梅で混ぜた感じで、今後も聞き続けていきたいラッパーの一人です。NORIKIYOの例のわざとらしいスキットよりも、レコーディングに遅刻している先輩(KYN)に電話をするぎこちないやり取りの方が、リアリティがあって面白いと感じました(SD JUNKSTAの職質スキットも好きなんですけどね)。

#9 RIP SLYMEGOLDEN TIMES


ヒップホップの枠を最も自由にいじくり回して、僕たちリスナーに新たな驚きを与えてくれる「センスオブワンダー」なグループ、リップスライム。
とか言いつつも『ロンバケ』『ジャングルフィーバー』と立て続けに出たシングルは派手さに欠けて不安に思っていたことも事実ですが……アルバム発売前に出された『SLY』で完全に復活を遂げましたね。他の配信シングルもアルバムの曲として機能していて、きれいにまとまった作品だと感じました。
#8 Smrytrps『ぐんじょうのびろうど』














9位に続いてキャリアの長いラップグループの作品を8位にしました。前々作、前作に続いて「色」をテーマにしたコンセプチュアルな作品ですが、今作が一番バランスが良く好きです。
僕はSemmyが数いるラッパーの中で最も好きなラッパーの一人なので彼のラップを聞けるだけで幸せになれるのですが、今作は曲によってはkつてのメンバーも全員揃っているものもあったりで非常に泣かせる作品です。この作品で活動に一区切りつけるようなのですがもったいなさすぎる。
とはいえメジャーデビュー⇒解散なんて事態に陥っても復活した彼ら。僕らは全然待ってますよ。
#7 サイプレス上野とロベルト吉野『TIC TAC



作品単位で彼らの魅力をあまさず凝縮することに初めて成功した作品だと思います。
ヒップホップ以外のライブの出演など対外試合が多い彼らですが、「地元」をキーワードにユアソンやスペアザといった他ジャンルのアーティストと積極的にコラボしている姿勢も非常に頼もしい。「シーン」なんてとこにいると過小評価されるだけなんでもうロキノン層に殴り込みをかけていってほしい!

#6 V.A.160R80 

ラップのコンピレーションアルバムで初めて1個の文句も出なかった作品。大ベテランから一歩間違えれば素人寸前の人まで詰め込んだカオスなメンツですが、そのすべてが「JUKEFootwork」の名のもと完全な調和で成り立っています。驚き。
リデカの二人がここまでエモい曲を作り上げてくることにもびっくりしたし、衰えを知らないECDが放つ「にぶい奴ら(は)これ分からないまま一生可哀想」「荒野目指せ」というパンチラインに痺れる。

全体を仕切っていたのがタイ在住の商社マン兼駆け出しトラックメイカー(?)であることも
面白い。
#5 KUTS DA COYOTEESCAPE TO PARADISE

当ブログでは満点をつけた本作ですが、全体ランクとしては5位にしました(星はあくまでおすすめ度という位置づけです)。

しょうもないトピックをひたすら面白おかしく聞かせるセンスに脱帽。

記事はこちら

#4 5lack × Olive Oil5O
好きなトラックメイカーと好きなラッパーのコラボほど嬉しいものはないですね。福岡がよっぽど居心地が良かったのか、5lackのラップがテンション2割増になっていることが印象深かったです。


#3 SALUOHLD Presents BIS2
3位は昨年鳴り物入りでデビューしたSALUのメジャーデビュー前の置き土産を

本作、リリース直後こそは話題になったものの、有名アーティストのフリー作品だと年末のアナーキーに話題が集中してしまいこちらの影が薄まってしまったのは非常に残念です。

タイトル通りOHLDがトータルプロデュースした本作は、はっきり言ってデビュー作の『IN MY SHOES』を軽く凌駕するクオリティです。Bach Logic主導のメジャー感のあるものと、OHLD主導のダウナーなものが入り混じると、やはり華やかなBL側に耳をひかれますが、全体のトーンをOHLD一色にするとひじょうにスムースに聞けて驚きました。

歌詞の内容もストリート寄りのものも多く、こんな良盤を残してくれればメジャーでの活躍も(当然路線は変わるだろうけど)期待せざるを得ません。

#2 VITO Foccacio『絶望の館


2位はSQUASH SQUADでの活躍はもちろんのこと、2012年末に出たソロ初作もずば抜けてよかったVITOの新譜を。

金属質な声と柔軟性あふれるフロウを武器にあらゆるトラックを乗りこなす、僕が日本でトップレベルに好きなラッパーですが、本作は写実性あふれるリリックを携え一作丸々ホラーもののストーリーテリングを繰り広げます。
トラックもクラウドラップ的な実験性の高いものが多いですが、M-5のTAKUMA THE GREATを招いたSOSがハードロック調のトラック上で狂った歌詞をまき散らす二人の魅力を存分に味わえます。
余談ですがタクマザグレートは客演ではどの作品でもいい仕事をしている印象が。フォルテ離脱のゴタゴタがあったけど(外野としてはどっちが悪いとかは知る由もないが)、あのパワフルさと知性を混ぜ合わせたラップスタイルはとても魅力ですね。
#1 環ROY『ラッキー
そして2013年の1位は環ROYの4枚目のフルアルバムを。
作品もさることながらリリースライブのパフォーマンスの完成度が素晴らしかったです。

記事はこちら。


…そんなこんなでしれっと後半がダダ遅れでの更新となってしまいました。
2013年はこんな記事もあって国産ヒップホップのファン層の好みの多様化が目立ってきているかなぁ と少し感じてきております(その分“最大公約数”を狙いえるアーティストも少なくなってきいている)。
一方でB.DやCherry Brownのメジャーからのリリースといった明るいニュース(まぁユニバ=EMIのメジャーラッシュは某やり手A&Rの奮闘あってのものかと思いますが…)もあり、正直今年はますます色々なカラーが増えてきて、もう誰も把握しきれない状態になるかもしれません。

フリーDL勢はまったく追えておらず、これは実際PCにアクセス⇒DL⇒解凍⇒iTunesにインポートという流れが、実は結構手間だなという部分が理由としては大きいです(タダだし今年はディグっていきます)。
そんなわけで、今年もいい音楽に会えますように!

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