2014年11月25日火曜日

0.5ミリ

★★★★★

俳優・奥田瑛二の長女で映画監督の安藤桃子が、実妹・安藤サクラを主演に起用した初の姉妹タッグ作品で、自身の介護経験から着想を得て書き下ろした小説を 映画化した人間ドラマ。介護ヘルパーの山岸サワは、派遣先の家族から「冥土の土産におじいちゃんと寝てほしい」との依頼を受ける。しかしその当日、サワは ある事件に巻き込まれ、家も金も仕事も全てを失ってしまう。人生の崖っぷちに立たされたサワは、訳ありの老人を見つけては介護を買って出る、押しかけヘルパーとして生きていくことになる。共演に柄本明、坂田利夫、草笛光子、津川雅彦ら。(http://eiga.com/movie/80677/より)

個人的には今年は邦画がかなり当たり年で、中でも本作はトップに位置する面白さだった。しかし邦画に関して言えばあまりにも有象無象の作品が多すぎるので僕自身が「自分好みの作品を嗅ぎ分ける嗅覚」を体得しただけなのかもしれない……

高知を舞台に繰り広げられるこの作品は安藤サクラ演じる介護士の視点を通じて、ゆくゆくはこの日本が行き着く先の未来を描いている。

息子たちの財産争いに悩まされる老人、コツコツ貯めた金を怪しい投資に持ちかけられる老人、痴ほうの妻に悩まされる老人……
全員が社会への居心地の悪さを抱き、孤独感を感じている。

その老人の元へ安藤サクラ演じるサワはほとんど押し掛けるかたちで介護にいそしむ。
正直そのコミュニケーション能力、家事スキルがあれば別の仕事や果ては良き主婦にでもなれそうなのに、彼女はなぜか「老人の介護」にこだわる。

そして彼女のキャラクターの魅力の凄まじさ。
大げさな表現になるかもしれないが、もはや神聖な雰囲気すら感じてしまう立ち居振る舞いだ。
一見すると老人の弱みに付け込んでは家に住み着いているようにしか見えないのだが(つまりは恐喝です)、彼女が行うととてもコミカルで笑えてしまう。無邪気さに惹かれるのだろうか。
介護にこだわる理由や、彼女の雰囲気に関しては後々の展開で納得させられるシーンがあるのだが、そこに見える悲しさもいいと感じてしまう。

シーンの画も一つひとつが丁寧で、監督の映画愛が感じられるシーンもチラホラ。
何より監督と主演の姉妹の母親がフードコーディネーターを行っており、サワの作るご飯は半端なく美味そうだ。食にほとんど興味がない僕が反応するくらいだから、相当のことだと思う。

老人を演じた俳優陣も多種多様に素晴らしかったが、津川雅彦の独白(パンフレットには7分間とある)が凄まじかった。
ネタバレになってしまうので伏せるが「アルツハイマーで自分の記憶を無くしても、戦争については忘れられない」ことが見る側からすると本当に衝撃だ。

原作本を読んでいなかったので読む楽しみも増えた。感謝したい。

2014年11月24日月曜日

ザ・レイド GOKUDO

★★★★

インドネシア発のバイオレンスアクションとして話題となった「ザ・レイド」の続編で、今作では、警察と政界支配を目論むアジアンマフィア、そして勢力拡大を狙う日本のヤクザの三つ巴の戦いを描く。上層部の命令を受け、潜入捜査官として生きることになった新人警官のラマは、名前を偽り、マフィアのボスの息子 ウチョの信頼を得て組織の一員になる。しかし、父親に反発するウチョが組織内で成り上ろうと企てた陰謀により、ラマは対立する日本人ヤクザとの抗争や果てしない戦いに巻き込まれていく。監督は前作に引き続き、イギリス出身でアジアを拠点とするギャレス・エバンス。松田龍平、遠藤憲一、北村一輝らが日本人ヤ クザとして出演。(http://eiga.com/movie/78171/より)

前作がヤクザマンションで繰り広げられるクローズド・アクションもので上映時間105分というシンプルな構成だったのに対し、今作はなんと上映時間は146分。これだけで作品の方向性がかなり違うだろうなと感じていたが予想以上に別物の映画となっていて驚いた。

まず今作は序盤の導入が長い。具体的には主人公が潜入捜査官になりマフィアのドラ息子に取り入るまでの流れだが、上記のあらすじを読んでおけば始めの30分は寝ていてもOK、といった感じだ。

一方でアクションはかなり多彩になっており、主人公も潜入捜査官=表向きはマフィアの用心棒なのを良いことに襲ってくる敵はほとんど殺してしまってる。
前作の「誰が死ぬのか分からない」緊張感も捨てがたいが、今作の街中でのバトルも相当に面白い。カメラアクションが秀逸で一瞬どのアングルで撮られているのか分からないシーンが多いのだが、これは吹っ飛ばされた人が「自分がどこにいるのか」を分からない様を上手く表現している。

そして最高なのが物語後半のカーチェイスシーン。ありとあらゆるアイデアで、出てくる人物全員が徹底的に痛めつけられており、もはやギャグとなっているが人間の発想力の素晴らしさたるや! といった内容。

敵陣営もバットとボールでノックの容量で人を殺す背の低い男や、鋭利なハンマーで殴っては切り裂く聾唖の女、と一昔前のマンガみたいな設定のキャラが平気で出てくるが、画づくりの説得力で見る側は納得してしまうのもこの映画の魅力。

ただ正直このシリーズに脚本を求めているかと言われると1ミリも求めていなく、凝ろうとしているのは分かるが相当面白くない+分かりづらかった。
日本からの俳優もスポンサー枠感が尋常じゃなく、ミスリードな邦題も最悪。

次があるのならヤクザの徹底参戦+原点回帰のクローズドアクションを楽しみたいけど……この条件を満たすとなると『殺し屋1』の実写化になってしまう!!
 

2014年11月23日日曜日

『フラテルニテ』体験版をやってみて

 

はじめに

アダルトゲームを初めてやりました。(といっても体験版ですが…)
以前から『ユーフォリア』なる作品が面白い、と聞いてたのだけどなかなか購入するハードルが高く……。
時期を逃していたら、『ユーフォリア』と同じレーベルからの最新作が本作『フラテルニテ』だとのことで、体験版をダウンロードした次第です。

なにぶん初めてのエロゲープレイは新鮮で(ビジュアルノベルはいくつかプレイしましたが)、プレイしていて少し思ったことがあったので、ここに書き留めておこうかと。
ブラックな就労環境で更新が覚束ない中、久々の更新記事がエロゲーの記事という末期具合にドン引いている方、ごめんなさい。



ユーザーからの低評価









まずはじめに得た情報が、前作『ユーフォリア』(というと語弊があるかもだけど)の評価が軒並み高いのに対して、『フラテルニテ』はあまり高くないということ。とはいってもエロゲーのレビューサイトなんて見たこともないし知らないので、情報源はAmazonのレビューなんだけども。

要因は色々あるようなのだが、僕自身ネタバレを避けながら読んでいるので分かったことといえば「シナリオが短い」「救いがない」「スカ◯◯がエグい」など。これらは『ユーフォリア』と比較したユーザーがそういった結論に至ったようです。

そうなると『ユーフォリア』をやっていないし、できれば『ユーフォリア』のネタバレも読みたくない人間にとっては評価が低くてもフラットに本作をプレイできるな、と感じチョロっとやってみた次第です。


ゲーム本編(といっても体験版だけ)

プレイ前はメガネの委員長が好みでした(今は特になし)
















※体験版しかプレイしていないのであくまでそこから汲み取れるものしか書いていません。体験版以降の展開により本編に違いがある場合はごめんなさい。

本作のあらすじを紹介すると、強姦被害にあった主人公の姉が「住み慣れた街から離れたい」と家族に言ったことを機に新しい街へ引っ越し、その引っ越し先にある新興宗教的な組織に姉が入れ込んでしまい、そこから姉を助け出したいが苦悩する主人公の奮闘……といった感じです。

なぜ主人公が苦悩するのか? というと実は彼の転校先の学校の知り合いのほとんどがその新興宗教に入れあげており、自分の協力者がいないからです(別に引っ越し先の街全体がその宗教に染まっているわけではなく、あくまで主人公の周りのクラスメイトたちだけのよう。ちょっと御都合主義ですね)。

その新興宗教がまたトンデモカルト集団で、(まぁエロゲーなんで当然の展開なんですが)ほぼ乱行サークルなんですね(しかも大麻的なのを焚きながらブッかましてるっぽい)。
その組織を仕切っているのが50代くらいの見た目は温和な紳士なんですが、いざそのシーンになると調教口調になってすんげーキモい。その時だけおっさんの音声がオフになるのは制作サイドの配慮みたいだけど、そもそもシチュエーション的に「無理!」と思い僕は高速クリックでやり過ごしました。

そこで強姦被害にあい、心を傷付けたはずの姉が見知らぬおっさんと行為に及んでいる様を主人公が見てしまい(それ以上のトンデモ展開になりますが、詳しくは体験版で!)、当然ながら困惑するのですが、メインヒロインぽい登場人物から言われるとある一言が強烈です。
「あの人たちはセックスをすることで幸せになれる。大勢の人の前で不特定多数の人と行為に及んで悦ぶ姿は、社会的には相応しくないのかもしれないけど、そこで幸せを得ている人たちからその権利を奪う自由があなた(主人公)にあるの?(かなり意訳です)」

「それでも俺は姉さんを救いたい!」と主人公は言うのですが、画面向こうの僕としてはとてもはっとさせられた気分になりました。このやり取りに実は本作のテーマがあるのでは? と思ったのです。

好きなものを楽しむ自由


制作サイドが意図しているか分かりませんが、これは言わばエロゲーファン的な「(世間から見ると)インモラルな趣味を楽しんでいる人たち」へも通ずる考えであるな、と思いました。
どういうことかというと「はたから見ると気持ち悪いものは犯罪につながるから根絶だ!」という流れの中で、ゲームやアニメが規制対象にされかねない現状と、この主人公の考える「常識」と、現に救われている人がいる「新興宗教」の関係に非常に似ていると感じるわけです。

モラルに囚われるだけじゃ救われない人間が一定数いる。他人に迷惑をかけなきゃ個室の中でくらい逸脱させてくれ。それで人生が(広義の意味で)救われているのだから。

しかしこの物語にエロゲーをやっているユーザーを当てはめると、「新興宗教」側の人間になってしまう。一方ユーザーは主人公目線、つまり「規制する側」としての目線でゲームプレイをします(実は群像劇タッチなので視点はシーンごとに他のキャラになったりもするのですが…あくまで物語全体の目線の話です)。
そうなると無意識的にこのゲームのストーリー(というかメタファー?)に拒否反応を起こしてしまうのでは、とエロゲー童貞の僕は感じました。

でもこうやって考えてみると、この作品は非常に面白い問題提起をしているんだなと感じます。そうなると「救いのない物語=規制のない世界」は実はユーザーにとっては「ある意味での救いの物語」になるんじゃないか…みたいな逆転現象が起こりうるわけで。

たとえばエロゲー好きのタカシくん(30歳・童貞)が親戚のおっさんに「タカシくん、いつまでもアニメの女の子に欲情してないでいい加減結婚しなさい!」みたいな説教をかまされたら当然「余計なお世話だよ!」と怒るわけです。
これだけならまだしも「あいつは小学生好きのヤバいやつだ…」みたいな風評被害が回ったらそれこそたまったもんじゃないです。

個人の嗜好の話と『フラテルニテ』 の物語を同じ次元で話すなよ、と突っ込まれそうですが極限まで突き詰めると地続きである、と言い切っても過言じゃない。
現に主人公に対し姉が「あなたがどう思っていても、サークルの迷惑になるような噂を撒かないでね!」と怒るシーンがあります。
彼女も世間一般から見れば後ろめたい行為を自分がやっている、ことは認識しているわけです。

ですがそれについて迷惑している人はいない、むしろ救われていると思っているからこそ自分のコミュニティを守りたい、昨今の2次元コンテンツ産業の象徴のような構図になっているようでとても切なくなりました。

そして…

ここまで長い文書いておいて、一つ問題なのが「お前は製品版を買うのか問題」なのですが、正直なところ非常に迷っています。
これがハードカバーの本で2千円くらいのものであれば即買いなのですが、エロゲーって高えのな。
PS4のゲームソフトくらいの値段がするので、まず財布的な問題で迷っています。

もう一つが「買うことで一線越える感あるな」的な話です。僕自身アニメは好きだし、ゲームもちょくちょくやるし、多分これよりハードコアな小説も読んだことあるし、、と考えれば「いけるやん!」ってなると思うのですが、踏ん切りが付かず……あと、あのショップの独特な雰囲気に気圧されます(「店には行ってんのかい!」には「はい。」と潔く答えます。ちなみにソフマップです)。
まぁこれはTSUTAYAののれんゾーンも似たようなもんか……。

皆さんにはこのブログにプレイ後記事が上がったかどうかで判断していただければ…と思います。
ちなみにこの記事、非常にまじめなタッチで書きましたが、実際プレイすると思わず笑っちゃうシーンが多いです。洗脳されたことを過剰に表現する演出なのかもしれませんが、そこを含めて笑っちゃいます。

ちなみに検索をかけていたら開発者インタビューに引っかかり…。
あくまでも「実用ゲー」とのこと
まぁ価値観は人それぞれですから。

2014年4月12日土曜日

それでも夜は明ける

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
★★★★
 
86回アカデミー作品賞受賞作。南部の農園に売られた黒人ソロモン・ノーサップが12年間の壮絶な奴隷生活をつづった伝記を、「SHAME シェイム」で注目を集めたスティーブ・マックイーン監督が映画化した人間ドラマ。1841年、奴隷制度が廃止される前のニューヨーク州サラトガ。自由証明書で認められた自由黒人で、白人の友人も多くいた黒人バイオリニストのソロモンは、愛する家族とともに幸せな生活を送っていたが、ある白人の裏切りによって拉致され、奴隷としてニューオーリンズの地へ売られてしまう。狂信的な選民主義者のエップスら白人たちの容赦ない差別と暴力に苦しめられながらも、ソロモンは決して尊厳を失うことはなかった。やがて12年の歳月が流れたある日、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バスと出会う。アカデミー賞では作品、監督ほか計9部門にノミネート。作品賞、助演女優賞、脚色賞の3部門を受賞した。(http://eiga.com/movie/79401/より)
 
黒人奴隷の映画、ということで週末に娯楽を求めて観るものでは当然ないとは頭では分かっていたが、やはり特定の人種や民族が虐げられる映画を観るのはしんどい……(タランティーノの『ジャンゴ』ですらもキツかった)。
 
黒人の奴隷の歴史に関してはほとんど無知だが、時代が時代ならこうも人は残酷になれるのかという部分をまざまざと見せられる。とは言ったものの、今もYahoo!ニュースのコメント欄や匿名掲示板で特定の人種へのヘイトは脈々と続いている。人間の営みの暗部なのだろう。
 
映画としては奴隷として売られた主人公がひたすら絶望的な目に遭う挿話がこれでもかと盛り込まれており、感動というよりはやりきれない気持ちが涙を誘う。
 
出資者としても名を連ねるブラッド・ピットは、「彼がプロデュースを名乗り出なかったら本作の制作はかなわなかった」と言わしめるくらいの功労者なので、当然ながらハンパなくいい役で出演している。
 
彼の登場が物語のターニングポイントなのだが、正直唐突過ぎる印象はあった。
 
…なんだかえらく淡白な感想になってしまったが、一つひとつの挿話は衝撃的なのだが物語の終わり方にもタイトルのような希望を抱くことも難しい、ひたすら心に重く残る一本。

2014年3月5日水曜日

キック・アス ジャスティス・フォーエバー

★★★★☆

オタクな高校生がヒーローとして立ち上がる姿を描いたマーク・ミラー原作のコミックを映画化し、口コミで評判が広まり全米大ヒットを記録した「キック・アス」のシリーズ第2作。キック・アス、ヒット・ガールというヒーローの姿を捨て、普通の学園生活を送っていたデイブとミンディ。しかし、卒業がせまり将来について考えたデイブは、スーパーヒーロー軍団を作り、世界の平和を守ることを決意する。キック・アスの活躍に触発された元ギャングの活動家スターズ・アンド・ストライク大佐とともに「ジャスティス・フォーエヴァー」を結成したデイブだったが、そんな彼の前に、打倒キック・アスを誓うレッド・ミストがマザー・ファッカーと名を改め、悪の軍団を率いて姿を現す。主演のアーロン・ジョンソン、クロエ・モレッツ、クリストファー・ミンツ=プラッセも続投し、ストライプス大佐役でジム・キャリーが新たに参加。前作を手がけたマシュー・ボーンは製作にまわり、「ネバー・バックダウン」のジェフ・ワドロウ監督がメガホンをとった。(http://eiga.com/movie/79094/より)

ヒーローものの作品は回を重ねるといずれは「正義とはなんであるか」といった難しい問題に直面し、結果作品初期の雰囲気を維持できぬまま深刻な展開になってしまうものが多い。

本作はオタクな主人公とマンガみたいな設定の(そりゃ原作はコミックだが)美少女殺し屋のキャラを生かしたポップで馬鹿馬鹿しい、ただ暴力描写はリアルという僕の弩直球の作品だけに、2作目はそういった雰囲気に陥って「キック・アスらしさ」を損なわないか心配していた。

しかし本作、監督が変わったといえど「キック・アス」のブランドをブラすことなく、シリアスなテーマも見事に描き切ったと思える。スカッとしたい人には申し分のない作品だ。

正直デイブの葛藤よりも、やはり僕らのアイドルヒットガールことミンディちゃんの思春期ゆえの戸惑いの方に鑑賞のウェイトを置いてはいたのでよく覚えていないが、それでも主人公としてよく頑張ってたと思う(適当)

今回はヒーロー(という名の暴力コスプレ集団)が数多く出てきて非常に面白い。
どのヒーローにもネタ元があるのだろうか? そこらへんも確認していきたい(「オペラ鑑賞の帰りに両親を殺された」はさすがに分かったが)何よりもやはりジム・キャリー扮する大佐のキャラが強烈かつ人間味あふれる男なので是非マフィア時代からヒーローに目覚めるまでのスト―リーをスピンオフ化してもらいたい!

あとは主役二人の通う高校の描写も面白い。ワン・ダイレクション風なアイドル(のMV)に高校のクイーンビー的立ち位置の女が欲情するシーンや、いかにもモテそうな男はスタジャンを来てたりなどステレオタイプ過ぎるが、ベタなシーンでも笑わせる技術はさすがじゃないでしょうか。

2014年2月18日火曜日

STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)
















★★★★

『CHAOS;HEAD』で描かれた、「ニュージェネレーションの狂気」による渋谷崩壊から1年後。秋葉原を拠点とする総勢3人の小さな発明サークル「未来ガジェット研究所」のリーダーである厨二病の大学生 岡部倫太郎は、研究所のメンバー(ラボメン)である橋田至や幼馴染でもある椎名まゆりと共に、日々ヘンテコな発明を繰り返していた。2010年7月28日、岡部は橋田と共に向かった講義会場で、弱冠17歳の天才少女、牧瀬紅莉栖と出会う。ところが、岡部はラジ館の8階奥で、血溜まりの中に倒れている紅莉栖を目撃し、そのことを橋田へ携帯メールで報告する。メールした直後、眩暈に襲われた岡部が我に返ると、ラジ館屋上には人工衛星らしきものが墜落しており、周辺は警察によって封鎖されていた。先ほど送信したはずのメールは、なぜか1週間前の日付で受信されており、周囲が話すここ最近の出来事と岡部の記憶の間には、齟齬が起こっていた。(Wikipediaより)

ここのところゲームをプレイする習慣はなかったが、以前から『かまいたちシリーズ』や『街』、『428』といったノベル形式のアドベンチャーゲームは結構好きでプレイしていた。いわゆる「ギャルゲー」になると『CLANNAD』(と、智代アフター)しかプレイしていないのだが、これらのゲームの特性である「ループ性」を、巧みに物語の中にも組み込ませている作品もあり、結構うならされたものだった。

こういったゲームを進めるにあたって必須ともいえる条件が、文庫本よろしくいつでもどこでも読み進められる=携帯ゲーム機でのプレイであると思う。テレビの画面に比べれば没入具合では劣るかもしれないが、会社勤めの身としてはサッと取り出せてプレイできることがやはりとても重要だ。ということで、本作もPS VITAでプレイした。

発明好きの大学生を主人公とする本作は巧みに貼られた伏線が回収されていく様が実に気持ちよく、ノベル好きだけでなくパズラー系のミステリ好きにもウケそうな内容だ。
とはいえ登場人物はやたら女性が多く、その上突飛な言動がイタい主人公に全員が多かれ少なかれ好意を抱いているというこの類のゲームにありがちな人間関係や、ライトノベル的な「身の回りのひょんな行動が世界の存亡に関わる」といった設定もテンプレ的で、序盤は抵抗を覚える人もいるかもしれない。しかし、本作は物語を動かす「素材」が非常に魅力的であるためあまり抵抗なく読み進められる。

「タイムマシン」や「アキバ文化」をふんだんに盛り込んだテキストとTipsは、そのジャンルに疎ければ疎いで興味深く読めるだろうし、散りばめられたジョジョネタも登場人物の会話にマッチしており、個人的には楽しめた(他にも様々な作品へのオマージュが込められているがそこら辺はネットで詳しく紹介している人がいる)。

序盤に言及した「ゲームのループ性を“物語の中そのもの”に組み込む形式」のものに本作もなっており、主人公の想いを追体験しながらストーリーを進めるため感情移入の度合もプレイ時間に比例して凄まじく上昇する。
はじめはオタクの内輪ノリに紛れ込んでしまったかのような居心地の悪い主人公たちの会話も、読み進めるにつれて不思議と愛おしくなっていく。激変する後半の物語の展開とのギャップが、親しい相手との何気ない会話が本来は掛け替えのないものであることを暗に示しているのだろう。

本作は小説によるサイドストーリーや劇場版アニメによるアフターストーリー、ドラマCDによる日常系のストーリーなどメディアミックスが非常に盛んなためそれらを掘っていくのもなかなか楽しい。
声優に疎い僕でも出演陣には「豪華だ!」と感じたし、「イタさ」まで表現している演技は逆に聞いている側が恥ずかしく感じなくていい。

iOSでも配信されているようなので気になるがゲーム機を買ってまで遊びたくない人はそちらでプレイしてもいいのかもしれない。

購入はこちらから。

2014年2月2日日曜日

ドラッグ・ウォー 毒戦




★★★☆

香港ノワールの巨匠ジョニー・トーの監督50作目で、中国公安警察の麻薬捜査官がアジアをまたにかけた巨大麻薬組織の壊滅に挑む姿を描いたサスペンスアクション。中国・津海にあるコカイン製造工場で爆発が発生し、現場から逃走した車が衝突事故を起こす。車を運転していた香港出身のテンミンという男が病院に担ぎ込まれるが、麻薬捜査官のジャン警部は、テンミンが麻薬組織に大きなかかわりを持っていると察する。麻薬密造には死刑判決が下るため、減刑と引き換えでテンミンに捜査協力を要請したジャン警部は、テンミンの情報をもとに潜入捜査を開始。すると、中国全土だけでなく韓国や日本にまで勢力を拡大する麻薬シンジゲートと、その巨大組織を裏で操る「香港の7人衆」の存在が浮かび上がる。

106分ノンストップで続く、追う側と追われる側の銃撃戦三昧。

冒頭の薬の運び屋の一斉検挙のシーンで警察側のキャラクターが怒涛の勢いで紹介されるが、それぞれの役割が明確なのでスッと頭に入ってくる。非常に鮮やかだ。

ホテルでのハラハラとする潜入捜査の一連の流れや、売人側の異常な戦闘能力の高さなどどのシーンもクライマックス級の盛り上がりで見ごたえがあった。

ジョニー・トー作品は近年ものしか観ていないが、本作は緊迫したシーンでも思わず笑ってしまうシュールな絵作りが多い。
序盤で死刑が確定している運び屋たちがコンドームに入れて飲み込んだ覚せい剤を桶にひりだそうとしているシーンは、老若男女が情けない姿で力んでいるさまを淡々と写している。

その“シュールさ”の集大成とも言えるのが終盤のある場所での銃撃戦で、普段その場所に流れている穏やかな空気が主人公たちによってぶっ壊されていく様子が、状況の凄惨さをさらに際立たせていて最早えぐい。

アクションもサスペンスもふんだんに盛り込まれていて本当に退屈しない映画だ。
あまり大きなどんでん返しなどはないが、退屈しのぎにはなるのでは。

2014年2月1日土曜日

THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!

 
 
★★★★☆
 
プレイヤーがプロデューサーとなってアイドルを育成する人気ゲームをアニメーション化し、2011年にテレビ放送された「アイドルマスター」の劇場版。脚本を新たに書き下ろした劇場版オリジナルストーリーで、芸能事務所765プロダクションに所属し、新米プロデューサーとともにトップアイドルを目指す少女たちが、アリーナライブに向けて合宿に励む日々を描く。監督・キャラクターデザイン・総作画監督の錦織敦史、脚本の高橋龍也、アニメーション制作のA-1 Picturesをはじめ、メインスタッフ、キャストともテレビシリーズから続投。http://eiga.com/movie/79111/より)
 
ドラマとアニメの映画化は、本来の映画ファンからはあまり良い印象を持たれない。
単純な一本の映像作品として観られる設定のものがあまりに少ないからだろう。その意味ではこれらは―昨年大ヒットを飛ばした「まどマギ」の新作しかり―ファンがこれまでのTV放送やその他メディアで体感してきた“文脈”を映画館という箱に集約させ、感動を共有する“場づくり”に、お金を払っていると言った方が近いのかもしれない。
 
だからアニメ作品の劇場版は0時解禁の上映が非常に盛り上がるのだろう。
 
今回取り上げている本作も、様々な文脈を集約させて、ファンに感動を与えている涙腺爆撃コンテンツだ。
世間からは問題視されている課金制の携帯ゲームに出てくるアイドルを新キャラとして投入したり、劇中のクライマックスの横浜アリーナでのライブシーンは、念願かなって実現した同場所での“中の人”たちのコンサートを彷彿とさせたり、TVアニメではまだまだ成長途中だったアイドルたちが、今作ではチームの一員としての自分の立ち位置を理解し、それぞれの役割を担っているという成長した一面だったり、このコンテンツを愛している人なら油断するとギャグシーンでも涙が出てきてしまうんじゃないかというくらい過剰に仕掛けが置かれている。

そんな765PROの成長しきった姿を観られる一方で、各キャラが大きくストーリーに絡んでくることは残念ながら少ない。今作は天海春香がリーダーとしてバックダンサーを交えて行う初のアリーナライブを、様々な問題点がある中でどのように着地させるかが最大の胆となる。

春香が抱くあるバックダンサーへの情とも捉えられてしまう感情に、怒り(そして焦り)をあらわにしてしまうダンサーもいるが、この流れに関してはアニメの終盤の状況の既視感をぬぐえない。
しかし、今回誰よりも悩んでいるのは新キャラたちであり、自分たちが通った道であることを自覚してフォローに回る765のメンツが非常に頼もしい。

話し、ぶつかり、泣き、向き合い、次のステップへ行く。
言ってしまえば話の流れは王道のスポ根青春ものだが、「アイドル=プロ」の意識のもと行動する彼女たちの姿は非常に眩しい。ライブシーンはもっとボリューミーにして欲しかったが、それを補って余りある人間ドラマを観ることができた。

というわけで、週替わり来場特典コンプリート目指して、毎週映画館に通います。

2014年1月30日木曜日

2013年 日本のヒップホップベストディスク Pt.2


続きです。前回はこちら
#10 WATT a.k.a. ヨッテルブッテル『Shikou品』



 まずは諭吉レコーズからのデビューとなったトラックメーカー/ラッパーのアルバムを。
シンセでギャンギャンしたトラックが主流の今、温もり豊かなサンプリング中心に編まれた13曲は彼自身の人柄が表れているラップで聞いていて非常に気持ちいい作品です。
ラップはNORIKIYOのフロウにボンクラ感と優しさをいい塩梅で混ぜた感じで、今後も聞き続けていきたいラッパーの一人です。NORIKIYOの例のわざとらしいスキットよりも、レコーディングに遅刻している先輩(KYN)に電話をするぎこちないやり取りの方が、リアリティがあって面白いと感じました(SD JUNKSTAの職質スキットも好きなんですけどね)。

#9 RIP SLYMEGOLDEN TIMES


ヒップホップの枠を最も自由にいじくり回して、僕たちリスナーに新たな驚きを与えてくれる「センスオブワンダー」なグループ、リップスライム。
とか言いつつも『ロンバケ』『ジャングルフィーバー』と立て続けに出たシングルは派手さに欠けて不安に思っていたことも事実ですが……アルバム発売前に出された『SLY』で完全に復活を遂げましたね。他の配信シングルもアルバムの曲として機能していて、きれいにまとまった作品だと感じました。
#8 Smrytrps『ぐんじょうのびろうど』














9位に続いてキャリアの長いラップグループの作品を8位にしました。前々作、前作に続いて「色」をテーマにしたコンセプチュアルな作品ですが、今作が一番バランスが良く好きです。
僕はSemmyが数いるラッパーの中で最も好きなラッパーの一人なので彼のラップを聞けるだけで幸せになれるのですが、今作は曲によってはkつてのメンバーも全員揃っているものもあったりで非常に泣かせる作品です。この作品で活動に一区切りつけるようなのですがもったいなさすぎる。
とはいえメジャーデビュー⇒解散なんて事態に陥っても復活した彼ら。僕らは全然待ってますよ。
#7 サイプレス上野とロベルト吉野『TIC TAC



作品単位で彼らの魅力をあまさず凝縮することに初めて成功した作品だと思います。
ヒップホップ以外のライブの出演など対外試合が多い彼らですが、「地元」をキーワードにユアソンやスペアザといった他ジャンルのアーティストと積極的にコラボしている姿勢も非常に頼もしい。「シーン」なんてとこにいると過小評価されるだけなんでもうロキノン層に殴り込みをかけていってほしい!

#6 V.A.160R80 

ラップのコンピレーションアルバムで初めて1個の文句も出なかった作品。大ベテランから一歩間違えれば素人寸前の人まで詰め込んだカオスなメンツですが、そのすべてが「JUKEFootwork」の名のもと完全な調和で成り立っています。驚き。
リデカの二人がここまでエモい曲を作り上げてくることにもびっくりしたし、衰えを知らないECDが放つ「にぶい奴ら(は)これ分からないまま一生可哀想」「荒野目指せ」というパンチラインに痺れる。

全体を仕切っていたのがタイ在住の商社マン兼駆け出しトラックメイカー(?)であることも
面白い。
#5 KUTS DA COYOTEESCAPE TO PARADISE

当ブログでは満点をつけた本作ですが、全体ランクとしては5位にしました(星はあくまでおすすめ度という位置づけです)。

しょうもないトピックをひたすら面白おかしく聞かせるセンスに脱帽。

記事はこちら

#4 5lack × Olive Oil5O
好きなトラックメイカーと好きなラッパーのコラボほど嬉しいものはないですね。福岡がよっぽど居心地が良かったのか、5lackのラップがテンション2割増になっていることが印象深かったです。


#3 SALUOHLD Presents BIS2
3位は昨年鳴り物入りでデビューしたSALUのメジャーデビュー前の置き土産を

本作、リリース直後こそは話題になったものの、有名アーティストのフリー作品だと年末のアナーキーに話題が集中してしまいこちらの影が薄まってしまったのは非常に残念です。

タイトル通りOHLDがトータルプロデュースした本作は、はっきり言ってデビュー作の『IN MY SHOES』を軽く凌駕するクオリティです。Bach Logic主導のメジャー感のあるものと、OHLD主導のダウナーなものが入り混じると、やはり華やかなBL側に耳をひかれますが、全体のトーンをOHLD一色にするとひじょうにスムースに聞けて驚きました。

歌詞の内容もストリート寄りのものも多く、こんな良盤を残してくれればメジャーでの活躍も(当然路線は変わるだろうけど)期待せざるを得ません。

#2 VITO Foccacio『絶望の館


2位はSQUASH SQUADでの活躍はもちろんのこと、2012年末に出たソロ初作もずば抜けてよかったVITOの新譜を。

金属質な声と柔軟性あふれるフロウを武器にあらゆるトラックを乗りこなす、僕が日本でトップレベルに好きなラッパーですが、本作は写実性あふれるリリックを携え一作丸々ホラーもののストーリーテリングを繰り広げます。
トラックもクラウドラップ的な実験性の高いものが多いですが、M-5のTAKUMA THE GREATを招いたSOSがハードロック調のトラック上で狂った歌詞をまき散らす二人の魅力を存分に味わえます。
余談ですがタクマザグレートは客演ではどの作品でもいい仕事をしている印象が。フォルテ離脱のゴタゴタがあったけど(外野としてはどっちが悪いとかは知る由もないが)、あのパワフルさと知性を混ぜ合わせたラップスタイルはとても魅力ですね。
#1 環ROY『ラッキー
そして2013年の1位は環ROYの4枚目のフルアルバムを。
作品もさることながらリリースライブのパフォーマンスの完成度が素晴らしかったです。

記事はこちら。


…そんなこんなでしれっと後半がダダ遅れでの更新となってしまいました。
2013年はこんな記事もあって国産ヒップホップのファン層の好みの多様化が目立ってきているかなぁ と少し感じてきております(その分“最大公約数”を狙いえるアーティストも少なくなってきいている)。
一方でB.DやCherry Brownのメジャーからのリリースといった明るいニュース(まぁユニバ=EMIのメジャーラッシュは某やり手A&Rの奮闘あってのものかと思いますが…)もあり、正直今年はますます色々なカラーが増えてきて、もう誰も把握しきれない状態になるかもしれません。

フリーDL勢はまったく追えておらず、これは実際PCにアクセス⇒DL⇒解凍⇒iTunesにインポートという流れが、実は結構手間だなという部分が理由としては大きいです(タダだし今年はディグっていきます)。
そんなわけで、今年もいい音楽に会えますように!

2014年1月19日日曜日

2013年 日本のヒップホップベストディスク Pt.1


明けましておめでとうございます。
 
まずブログ更新、威勢が良かったのははじめたての10月のみ…という不真面目ぷり、大変申し訳ありません。
何のための移転だったのか…なんてことにはしたくないため今年こそは! しっかりとやっていきたいと思います。
そんなわけで新年一発目の更新は(新年始まってもう3週間になりますが。。)、昨年よく聞いた音楽を振り返ろうかと思います。

まずは日本のヒップホップミュージックのベストディスクを! おそらく前後編に分けてお送りします。皆さんご存知2Dcolvicsさんにも寄稿させていただいていますが、あちらは年末に買い込んだ作品を入れきれていなかったのでこちらが完全版ってことで。

2013年の国産ヒップホップは「これは!」という弩級の作品はなかったにせよ、パッケージでの待望のデビューを果たした作品や、中堅の意欲的な作品なんかが目立った年だったと思います。まぁようは昨年も十分楽しみましたよってことです。

#20 m-floNEVEN
 
 
リリースペースの早いエムフローは前作から強めたEDMカラーをさらに推し進めてきた印象です。

アヴィーチーの日本デビューも手伝って今年もEDM熱は冷めない感じかな?(←超適当)

#19 MUTANTANERSMYND OF MUTANT 突然変異的反抗期』
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
パイセンディスりコンビのQNRAU DEFが中心となって組まれたクルーの初作。タイトルもにやりもの。
やはりこの二人のラップスキルは他の若手と比べても群を抜いて上手い。他のメンバーのラップに苦言を呈している人もいますが僕自身はその“粗さ”(失礼!)も含めて好きです。
M-5「専門ドロップアウト」のライナスのモラトリアム感や、M-10「ユニクロ」の自身の奔放さを実は持て余しているラウデフの心情吐露とも取れるサビやバースにもグッとくるものがあります。
ただ曲数&QNの出番があまりにも少ないのが残念な点。

#18 PRIMALPROLETARIAT


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
MSCのメンバーでもあるプライマルの2作目。無骨なラップスタイルは前作のままで安心感を得た作品。

急逝してしまったマキザマジックプロデュースのM-2がやはりカッコいい。

#17 Fla$hBackSFLY FALL


 
お次はみんなのアイドルにしてアジカンゴッチも見初めた若手クルー、フラッシュバックスのフリーEPを。
これ、アルバムの販促で出されたみたいだけど、制作時期はファーストアルバムより後のものですよね?
初作よりもしなやかになったラップが堪能できます。その後の活躍は皆さんご存知の通り(というかファーストは一昨年の時点で評価されていたしね)。


#16 MARIADetox


 
シミラボの綺麗どころ、マリアのソロデビュー作品はアルバムの流れが非常にしっかりしていたと思います。

16曲スキットなしで聞かすことをOMSBがしっかりプロダクションしていたんだろうなぁと感じました。

ポップな作りながらマリアが持っているダウナー感も良く織り交ぜていて彼女の人間的な側面も作品から伝わってきます。実は泉まくらとかdaako的なフィーメイルラッパーが苦手なので、マリアみたいなカッコよさを打ち出すスタイルがよりヒップホップリスナー以外にも伝えていきたいです。
#15 ISSUGIEARR


DOWN NORTH CAMPの重鎮イスギの3作目も非常にポップで聞きやすかったです。3分台の曲は15曲中わずか2曲。
ほかは12分台で矢継ぎ早に曲が変わっていく構成ですが、まったく慌しさを感じさせることなく聞けます。
イスギのリスナーは彼のクールなフロウが目的の人が多いと思いますが、作品を重ねるごとに個性を鋭敏にしていっている姿勢はさすがです。
要はクールさ3割増くらいになってるってことです。


#14 L-VOKAL『別人Lボーカル』


 

 
 
 
 
 
 
 
 
前作『LIVIN’』にはあまりハマらなかったが、KREVAトータルプロデュースの本作はタイトルに「別人」と付いているものの「らしさ」溢れる快作。
彼の持っているユーモアも健全で、程よくジャジーなクレバのトラックがラップのトピック、フロウに非常にマッチしています。
初音ミク(?)を客演に招いた最後の曲も意欲的。

#13 KREVASPACE TOUR

 
そして13位はクレバのライブアルバムを。

クレバのライブ構成はレコ発ツアーでもいつもベストアルバム的な構成で行われるのでセットリストに関しては予定調和な感じは否めませんが、バンドセットの導入で音の厚みが増しているので聞き逃しは厳禁。新作『SPACE』自体は『GO』を超えたかと言われると個人的にはそこまで…という感じですが、これなら一度で3回分くらい美味しくいただける作品です。
#12 SNEEEZEAsymmetry
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
最新のフロウに捨てきれないイノセンスを乗せて。
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#11 Cherry BrownEscapism
 
11位はリスナーが待ちに待ち続けていたチェリーブラウンのデビューアルバムを。

まさかのメジャーからのリリースという驚きのデビューですが、日本のヒップホップサイトの大御所の某Ambreakは完全にスルーを決め込むという驚きの事態。
アナーキーがエイベックスに移籍したことはニュースで取り上げているのに? と誰もが疑問を抱いたことは間違いありませんがまぁ過去にひと悶着あったことが改めて浮き彫りになってしまったようですね。
肝心の中身も彼自身のカラーを変えることなくメジャーのフィールドに立っていることに感動もひとしお。定番曲「よりどりみどりー」も苦しい当て字で収録に乗り切っていて、歌詞カード見て爆笑させていただきました! 

以上で前半終了! 後半は次の更新で。